虫歯の治療法は進行の状態によって様々です。また、治療をお受けになる患者さんのご希望も大事な要素です。
ここでは治療の流れをおおまかに解説します。
虫歯の治し方 (その1) 虫歯の進行
虫歯の治し方は、その深さによってかわってきます。今月は虫歯がどのように進行してゆくかみていきます。
虫歯はその深さによってC1~C4まで分けられていて、数字が大きくなるほど重症です。どんな症状がでるか、どのように処置されるかを解説します。
虫歯の深さ
C1…虫歯が表面のエナメル質にとどまっている
C2…虫歯が内部の象牙質に達している
C3…虫歯が歯髄(神経)にまで進行
C4…歯の形が大きく崩壊し、残根状態
C1
エナメル質に感覚はないので、痛くもかゆくもない。治療もこの程度ならば詰めるだけなので1回で済む。麻酔も要らない。虫歯はこの段階で発見したいが、症状が無いため自分だけでは難しい。
C2
象牙質には神経があるので、冷たいものがしみたり、噛むと痛い、等の症状がでることがある。「虫歯?」と思いつつ、つい先延ばしにすると大変。詰める治療のことも多いが、型を取って金属を入れる治療だと2~3回かかる。
C3
虫歯が神経に達すると強い痛みが生じ、神経を取らなくてはならない。更に進んで細菌が奥深く入り込むと神経は死んでしまい、根の先端に病巣ができる。治療は神経の処置の後金属冠をかぶせるので5~6回以上。長い通院が必要になってしまう。
C4
歯根のみの状態で、残念ながら抜歯以外に治療法はない。根の先に大きな嚢胞(膿の袋)ができて手術が必要なことも。抜いた後に義歯、ブリッジ、人工歯根(インプラント)などで歯を補う。治療が最終的に完了するのに数ヶ月~半年以上かかる場合もある。
このように、時間と治療費を節約するには定期検診などを受けて早期発見、早期治療することが必要ですが、もちろん一番良いのは虫歯を作らないようにブラッシングで歯垢を確実に除去すること(プラークコントロール)です。
虫歯の治し方 (その2)虫歯の治療法(レジン充填)
比較的小さい虫歯(C1~C2)の治し方と、その利点、欠点をご紹介します。
◇ レジン充てん
歯科用レジン(樹脂)は50年以上の歴史がありますが、近年の有機材料の進歩により非常に優れた複合レジン(コンポジットレジン)のシステムが開発され、虫歯の治療に広く使われるようになりました。
レジン充てんのステップ
- 虫歯の範囲深さを診査
- 虫歯を完全に除去
- 数種の薬品で処理
- レジンを詰めて光を当て硬化、研磨して完成
●利点
歯と非常に似た色であるため見た目が良く、審美性が問題となる前歯などに最適。
虫歯の除去から治療終了までが1回でできる。歯と化学的に接着するので、必要最小限歯を削れば済む。
このような小さな虫歯を処置する場合・・・ 接着性のあるレジンでは虫歯の部分だけを除去し、歯を削るのは最小限にとどめます。 接着性のない材料では詰めた物がとれないようにするには削る量は多くなりがちです。
●欠点
金属を使う治療法に比べると強度は劣るので、奥歯の大きめの虫歯には慎重に使う必要あり。奥歯の歯と歯の間などにはきれいに詰めるのが難しく、虫歯の再発や歯周病の原因になることがある。
虫歯の治し方 (その3) 虫歯の治療法(インレー修復)
比較的浅い虫歯に対するもう一つの代表的治療法、インレー修復のお話です。
◇ インレー修復
虫歯の穴(ウ窩)の型をとって模型をつくり、それに合うように鋳造した金属を歯科用セメントで歯に装着する方法。今世紀初頭からある伝統的な治療法です。
利点:
- 模型をとって口の外で作るので、直接詰め物をする治療よりも隅々まで最適な形に作れる。
- 金属なのでレジン(樹脂)などと違い、欠けたり折れたりすることがほとんどない。
- 金合金を用いた場合には非常に強靭、高精度で、金属色の問題を除けば理想的な治療法。
欠点:
- 金属色のために、目立つ場所では問題になることがある。
- 治療が最低2回はかかる。
- 金合金インレー(14K、18K、20Kなど)は保険適応外。保険の範囲では12%金パラジウム合金(主成分は銀)を使うことが多い。
オールセラミックス修復 ~最新歯科事情~
最近では「精度良く、しかも見た目もよくて金属アレルギーの原因にもならない材料」として「オールセラミックス」も注目されつつあります。高価な原材料、製作に非常な高精度を必要とすることなどから残念ながら保険適応外となっていますが、近年の審美歯科(エステティック・デンティストリー)の需要の高まりから徐々に普及してきています。
上あごの小臼歯(犬歯のすぐ後ろの歯)の型取り前の状態。歯の頬側(写真の上方)以外は虫歯で削ってある。
従来の治療法では殆どが金属で覆われてしまい見た目に問題が出るが、オールセラミックスを用いると解決できる。
拡大した写真でようやく見分けがつく程度である。
現在、日本で使われているオールセラミックスは材質により数種類あり、新製品が相次いで開発されている。